今年開通100周年をむかえる大河津分水をご存じですか

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川の県、新潟に流れる大河津分水

日本最長として知られ日本三大河川の一つでもある信濃川。たくさんの支流の中に「新信濃川」とも言われた人工の河川があるのはご存じですか。
紹介する大河津分水は明治時代から本格的に工事が始まり1922年に通水をした、人工の河川です。
今年通水100周年を迎える大河津分水はまさに越後平野の治水の歴史が詰まった日本最大級の治水事業です。
その歴史と、雄大さを体感できるスポットを紹介します。

大河津分水とは

画像左側から流れてくる信濃川から分岐し画像奥へと続くのが大河津分水 提供:信濃川大河津資料館
長野県と新潟県にまたがって流れる信濃川。全長367kmのうち河口から約50km地点にて分岐する大河津分水は全長9.1kmで日本海に流れ込みます。
信濃川は米どころ越後平野に水を送り込みますが、大雨の時の洪水を防ぐために建設されました。
信濃川との分岐地点にある2つの巨大な堰(信濃川側:大河津洗堰、大河津分水側:大河津可動堰)によって信濃川の水量を毎秒270㎥にコントロールし、それを超える分は分水を通って日本海へ送り込まれます。
また分水沿いの堤防には「大河津分水路工事」を称えて約2600本のソメイヨシノが植えられた、大河津分水桜並木があります。

大河津分水の歴史

水害に悩まされた越後平野

横田切れ 提供:信濃川大河津資料館
非常に多くの水量を持つ信濃川は越後平野に多くの恵みをもたらすと同時に、古くからたくさんの水害を発生させてきました。

越後平野は水はけも良くない湿地帯のため一度氾濫すると水が引くのに時間がかかることなどから、18世紀前半から約150年に渡り分水工事に関する請願が繰り返されてきました。
その結果、1870年に大河津分水工事(第1期)が開始しました。 しかし、「大河津分水ができると信濃川河口の水深が浅くなり、新潟港に影響が出る」という外国人技術者の意見をもとに1875年には工事は中止になってしまいました。
その後も多くの実業家や住民が大河津分水の必要性を訴え続けました。

そして1896年7月「横田切れ」と言われる大水害が発生します。多数の堤防が決壊し長岡から新潟のほぼ全域にわたる180㎢というとても広い範囲が浸水し、多くの人が食料や住居を失い苦しむ中、より分水の建設を待ち望む人が増えていきました。

工事

工事で使用された大型機械 提供:信濃川大河津資料館
地すべりの様子(1915年)提供:信濃川大河津資料館

一段と強まった大河津分水の建設を望む声に政府は1907年に建設を正式に決定し、1909年より第2期工事が開始されました。この工事は当時例を見ない大規模な工事となり、1000万人にも上る人が参加したほか、国内外の最新の大型機械や最先端の技術が惜しみなく投入され、「東洋のパナマ運河」とも言われました。
大規模な地すべりなどにも悩まされながら最初の請願からおよそ2世紀、15年近くにも及ぶ工事期間の末1922年8月25日に通水を迎えました。

今年2022年8月には通水から100年を迎えます。100年前にこれほど大規模な工事が行われたとは感慨深いですね。

通水から現代まで

補修工事によって建設された可動堰(1931年)提供:信濃川大河津資料館
その後も1927年には当時分水の分岐にあった自在堰が陥没してしまいました。その後信濃川補修工事によって自在堰に代わる可動堰の建設が行われました。 1931年、全ての工事が終了し大河津分水はその機能を発揮するようになりました。

大河津分水ができたことは水害の減少だけでなく、水量が減少した下流域では川幅を縮め農地や市街地を増やすことにもつながりました。新潟の発展に果たした役割がとても大きいことがわかりますね。

また近年では老朽化した堰に代わって洗堰(信濃川側)は2002年・可動堰(大河津分水側)は2014年に改築されました。現在は「令和の大改修」といわれる様々な工事が行われています。

現代の新潟の発展にも大きく寄与した大河津分水をその目で見ながら新潟の歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

大河津分水を体感できるスポット

信濃川大河津資料館

提供:信濃川大河津資料館

大河津分水の歴史や100年前の工事の様子などを映像シアターやシミュレーション、さらに実物のトロッコなどで学ぶことができる施設。
4階の展望室からは大河津分水の様子を一望できます。

旧洗堰

提供:信濃川大河津資料館

1922年の通水時から使われていた旧大河津洗堰(信濃川側)が当時の姿のまま残されています。新しい洗堰が完成した後は広場として整備され、ゲートの下をくぐり抜けられるようになっています。
国登録有形文化財。

大河津分水路100周年記念サイト(別ウィンドウで開きます)
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