高輪で歴史と未来を感じる!過去の記録と最新技術で【高輪築堤】を知る

  • 東京
  • 観光する
2027年度公開予定の第7橋梁部イメージ【素材提供・JR東日本】
日本で初めて鉄道が走った地をご存知でしょうか?今から約150年前、新橋と横浜をつなぐ全長約29kmの鉄道が日本で初めて開業しました。東アジアでも初となる、記念すべき鉄道の誕生です。そのうち約2.7kmは、海の上に石を積み上げて堤が築かれ、その上を蒸気機関車が走りました。この海上の鉄道用の堤が「高輪築堤」です。

築堤は大正時代に東京湾の埋め立て事業とともに姿を消していましたが、2019年、品川駅の改良工事の際に高輪築堤の石垣の一部が発見されました。場所は、現在の高輪ゲートウェイ駅の周辺、田町と品川の間にあたる地域です。そして発掘されたこの歴史的遺構は、「旧新橋停車場跡及び高輪築堤跡」として国の史跡に指定されました。

そんな高輪の街には、かつての人々の暮らしや鉄道の歴史に触れながら、今の最新技術で過去を身近に感じることができる場所があります。歴史と未来が交わる体験を高輪の地でしてみませんか?

日本初の鉄道は海の上を走った!

明治の初め、日本では文明開化が始まり、西洋からさまざまな文化が取り入れられる中で近代化が進められていきました。鉄道もまた、新たな輸送手段のひとつとして、その開発計画が進みました。

しかし、政府が鉄道建設を決定した後も莫大な建設予算に対する反対の声が多く、さらに東海道沿いには旧薩摩藩邸や兵部省といった当時の行政機関による軍用地が存在していたため、鉄道用の土地を確保することが難しかったと言われています。そこで、「鉄道の父」と言われている井上勝は、鉄道建設に積極的だった大隈重信とともに、鉄道用地の確保が難しい地域を避けるため、高輪築堤の建設を進めました。

「海の上にレールを敷く」と聞くと、埋め立てて線路を作るイメージがありますが、土地を埋め立てるのではなく、海の上に鉄道のレールだけを支える石積みの堤を築きました。その石積みは、日本の城壁に見られる石積みの伝統技術を活かして造られ、そしてその上にイギリスから輸入されたレールが敷かれ、そこを蒸気機関車が走り抜けました。日本の伝統技術と西洋の近代技術が織りなすこの高輪築堤は文明開化の象徴であり、イノベーションの証として今も大切にされています。
発掘された高輪築堤の第7橋梁部【素材提供・JR東日本】

鉄道を走らせるためだけではない!高輪築堤の持つ役割とは?

高輪築堤という言葉に馴染みがなくても、歌川広重(三代)が描いた錦絵「東京品川海辺蒸気車鉄道之真景」を目にしたことがある方もいるのではないでしょうか。

この絵の中に描かれた築堤を見ると、船が行き交えるように築堤の下に橋が設けられているのがわかります。これは見た目を飾るためのものではなく、かつてこの地で暮らしていた人々の生業であった漁業を妨げないように、船が通れるようにするためでした。高輪築堤が持つ、こうした機能的な役割が垣間見えるのも高輪築堤跡の大きな価値の1つと言われています。
港区立郷土歴史館所蔵:歌川広重(三代)「東京品川海辺蒸気車鉄道之真景」【素材提供・港区立郷土歴史館】

昔にタイムスリップ!?海の上を走る蒸気機関車が現在でも見られる場所

海の上を走った日本で初めての鉄道の歴史を体感できる特別なスポットが「TAKANAWA GATEWAY CITY」にあります。高輪ゲートウェイ駅の改札を出て1階へ下りると、「高輪リンクライン」と呼ばれる広場があり、こちらでは「TAKANAWA LINK SCAPE」というAR体験プログラムが開催されています。

鉄道開業期からこれからの未来までどのように乗り物が進化を遂げ、私たちの暮らしを豊かにしているのかを写真やイラスト、AR体験等を通じて知ることができますよ。高輪リンクラインには発掘された高輪築堤の石の一部が使用され、築堤の石積みを再現したデザインになっていたり、地面には当時と同じ位置にレールが組み込まれていたりと歩くだけでも歴史を感じる空間です。見どころがたくさんある中でも特におすすめしたいのが、「築堤と機関車」というAR体験です。

高輪リンクラインの仮囲いや地面に貼られた二次元バーコードをスマートフォンで読み込み、画面の指示に従って操作すると、なんと!高輪築堤がスマートフォンの画面に現れ、地面に埋め込まれたレールの上を蒸気機関車が走り出します。「ARと言ってもただの映像でしょ?」と思うかもしれませんが、実際に体験すると「おお!」と思わず声をあげてしまうほどの迫力です!音声ナビゲーションとともに歴史の解説もあるので楽しみながら高輪築堤の歴史を知ることができます。高輪リンクラインの仮囲いには明治時代から現代に至るまでの生活やモビリティにまつわるクイズや豆知識なども紹介されていて、楽しく学べる仕掛けが満載です。TAKANAWA GATEWAY CITYへお越しの際は、ぜひこの場所ならではの体験をお楽しみください。

また、鉄道開業期に走っていた1号機関車(150形蒸気機関車)は現在、埼玉県・大宮の鉄道博物館に展示されています。「もっと鉄道の歴史を感じたい!」という方は、ぜひそちらにも足を運んでみてはいかがでしょうか。

参考文献:港区ホームページ、文化庁広報誌「buncul」、TAKANAWA GATEWAY CITYホームページ
TAKANAWA GATEWAY CITY内のTAKANAWA LINK SCAPE

港区立郷土歴史館で歴史の奥深さに触れる

鉄道が初めて走り、高輪築堤が築かれた記念すべき高輪の地。時代は進み、その歴史は今もなお語り継がれています。そんな港区の歴史を楽しく体験できる場所が白金台にある港区立郷土歴史館です。楽しさの中に、学びと発見。こちらでは、展示品を見て、触れて感じ、歴史を自身の経験として体感することができます。

まず、注目すべきは、港区立郷土歴史館の建物です。1938年に建てられた「旧公衆衛生院」を保存・改修し、活用しています。現在では、港区指定有形文化財として、建物そのものが貴重な歴史の一部となり、建設当時の姿を可能な限り残しながらも、現代に寄り添い、歴史とともに愛されています。
港区立郷土歴史館(旧公衆衛生院)の外観

港区の歴史に触れる

館内は無料で見学できる展示のほか、有料の常設展示や期間限定で開催される特別展・企画展もあり、訪れるたびに新たな発見があります。当初、研修や研究施設として使われていた名残から、廊下を挟んで教室のように部屋が並びます。その構造を活かし、展示室ごとに異なるテーマが設けられているのも、この館ならではの魅力です。

「歴史の知識がなくて楽しめるか不安」という方も、心配ありません。展示室の多くにはタッチパネルが設置され、映像や音声でわかりやすく解説が流れます。目の前の展示に自然と引き込まれて歴史の面白さに触れることができますよ。さらにプロジェクションマッピングやAR映像といった先端技術が、昔の暮らしや出来事を立体的に伝えてくれます。

常設展示は、大きく3つのテーマで構成され、その中でもさらに小テーマが散りばめられています。古代、中世、近世など時代ごとに追っていくのではなく、心に惹かれたテーマから自由に見てまわれるのも、この歴史館ならでは。歴史と、自分との距離がぐっと近づくような体験が待っています。
大理石が使用された中央ホール
港区の歴史や日常がわかる無料のガイダンスルーム

史料で見る高輪築堤

「ひとの移動とくらし」という展示では、港区の近現代の変遷が5つの視点で紹介されています。そのひとつ「交通・運輸にみる近現代」では、今にも動きそうな高輪築堤のジオラマを見ることができます。俯瞰して眺めるジオラマには、AR映像で一号機関車が走るのを眺めるのとはひと味違う感動があります。

また別の展示室では、高輪築堤が築かれる前の地図も公開されていて、東海道沿いに建つ薩摩藩邸の姿など、当時の港区のようすを想像できます。「鉄道用地の取得が困難な地域を避けて鉄道を通すため」という、そんな高輪築堤の歴史も垣間見えます。港区立郷土歴史館では季節ごとにさまざまなイベントなども行われているため、訪れる前に最新の情報をチェックしておくとより充実した時間を過ごせますよ。
有料展示内の高輪築堤のジオラマ(通常は撮影不可) 【素材提供・港区立郷土歴史館】
「港区立郷土歴史館」の公式ホームページはこちら

歴史と今、そして未来が交わる高輪の地

日本初の鉄道が走ったのは、現在の10月14日であり、「鉄道の日」になっています。この日は当時の暦で9月12日です。鉄道が走り初め、さまざまな人々が集まり、未来を創った高輪の地。約150年の時を経て、新たに未来を創る場所、ニュウマン高輪が2025年9月12日にオープンしました。さらに2027年度に、国指定史跡の第7橋梁部および公園部の現地保存・公開も予定されています。先端技術を活用した展示等により、鉄道開業期のイノベーションを体感できるようになるとのことです。

ぜひ歴史と未来が融合し、イノベーションが生まれ続ける高輪エリアで、歴史、現在、そして未来を楽しむ充実な1日を過ごしてみてはいかがでしょうか。
2027年度に予定されている公園部回廊から高輪築堤を眺めるイメージ【素材提供・JR東日本】
「ニュウマン高輪」公式ホームページはこちら

好きな列車と宿または日帰りプランを組み合わせておトクに旅行しよう!

自分だけのオリジナル旅行が作れる

「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」は、列車と宿を自由に選べてまとめて一度に申込める、Web販売限定の価格変動型個人旅行商品です。お申込みのタイミングや条件によってはおトクになることも♪お申込みは、最短で出発当日でもOK!旅行だけでなく、出張やワーケーションにもおすすめです。さらに日帰りプランもご用意!予定や目的に合わせて、あなただけの旅をお楽しみください。
この記事に関連するタグ
前の記事 一覧へ戻る 次の記事
関連記事